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2016年2月14日 エイジ・オブ・エンライトゥンメント管弦楽団演奏会
指揮:サー・ロジャー・ノリントン
独奏:リサ・ベズノシウク (flute)、フランス・ケリー (harp)
(1) ハイドン:交響曲第83番
(2) モーツァルト:フルートとハープのための協奏曲
(3) Chevalier de Sain-Georges:L'Amant anonymから序曲
(4) ベートーヴェン:交響曲第2番
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バッハやモーツァルトの曲を古楽器オーケストラで聴くのは好きでCDは何枚も持っていますが、実演は初体験。ロンドンは時代楽器演奏の草分けなのに、今まで機会を逃していました。ノリントンとエイジ・オブ・エンライトゥンメント管弦楽団の雅やかな音色と暖かい音楽は味わい深いものがあります。ヴィヴラートをほとんど使わない(一人、二人かけているVnの人がいますが)弦楽器の響きはシンプルでぜい肉がなく、いろんな音の重なりがクリアに聞こえます。また管楽器の響きが立派過ぎないため、その楽器本来の色合いが、オーケストラの音色に効果的に彩りを添えます。そのため、作曲家のスコアリングの意図が明確に分かるかのようです。
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この傾向は、モーツァルト、ベートーヴェンと時代が下るにつれ顕著です。「フルートとハープのための協奏曲」は、決してフランス風の優雅の曲ではなく、当時のオーケストラの特徴を最大限に発揮させた極めてオーケストレーションの巧みな曲のように思えました。ベートーベンの交響曲2番も、私にはモダン楽器で聴くと少々退屈なのですが、古楽器のこの日の演奏では、様々なモチーフやフレーズが様々な楽器の間をくるくる受け渡される様子がとても面白く、第3番以降と同じく革新的な音楽語法の曲のように感じることができました。
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モーツァルトでflを演奏したのは古楽器でお馴染みのベズノシウク。ひと頃英国の古楽器のレコーディングではフルートはほとんどこの人が吹いていたように記憶しています。私もバッハの演奏を中心にCDをいくつか持っていますが、そのしっとりした音色と歌はとても味わい深いものです。この日のモーツァルトでも、小鳥のさえずりのようなflはとてもチャーミングで、装飾音符のアドリブを多用した時代楽器特有の奏法も見事でした。ただし、ホールがやはり大きすぎたかも。音がいまひとつ通らず微妙なニュアンスを聞けなかったのは残念でした。もっとこじんまりとしたホールでこそ、この人のその味わい深い演奏を堪能できたと思います。
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ベートーヴェンでは、クラリネットの名手アントニー・ペイが登場。よく透る軽やかで暖かい音は現代でも極めて魅力的です。こういう音を聴くとドイツやウィーンのクラリネットは重いなと思ってしまいます。この人はモダン楽器でも、マリナー指揮のグラン・パルティータなどでダンディーな演奏を聴かせてくれますが、古楽器の音からの影響が大きいのでしょう。

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ロンドン交響楽団、指揮:アントニオ・パッパーノ、pf独奏:リーズ・ドゥ・ラ・サール
1) ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲
2) レスピーギ:ローマの祭、ローマの噴水、ローマの松
2016年1月31日、ロンドン、バービカンホール

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パッパーノの指揮による演奏を初めて聴きました。この人は王立歌劇場の音楽監督を務めていて貴族の称号(sir)を持っていますが、私と同年代ですね。キビキビした指揮は堂々たるもの、ツボを心得た棒さばきで複雑なレスピーギのスコアを振り分け、じゃじゃ馬のロンドン響を巧みに操ります。

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ローマ三部作(祭、噴水、松、の順)は色彩豊かで情景の描写が見事、パワフルでもあり素晴らしかったです。ロンドン響は決して美しい音ではないのですが、こういうvividな音楽になると冴え渡ります。普段はなおざりがちなアインザッツもこの日は揃っているから不思議です。各楽器のソロが本当に生き生きしていますね。弦楽器もどちらかというと無機質でざらつく音なのですが、分厚いハーモニーの心地よさはやはりこのオーケストラならではです。

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”パガニーニの主題による変奏曲”は、予定されていたピアニストが怪我のため、リーズ・ドゥ・ラ・サール遽代役。しかし、代役とは思えない堂々とした演奏でした。この人はまだ27歳の若手、日本にも演奏したことがあるそうですが、弱音でもよく通るキュートな音色が特徴でした。陰影がもっとつくとなお良いかなと思いましたが、これからが期待される人です。
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今回のウィーン遠征は、金曜日の夜にロンドンを経って、日曜日の昼間のコンサートを聴きその夜にまたロンドンに帰るという、ハードスケジュール。その中で見かけた街にある音楽の風景をご紹介しましょう。

まずコンサート会場のムジークフェラインの前のカールスプラッツ(広場)には、有名なブラームスの像があります。ウィーンフィルのコンサートの前にはぴったりですね。
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そのそばにあるウィーン・カールスプラッツ美術館は、クリムトやエゴン・シーレの絵が目当てで行ったのですが、珍しい縦型グランドピアノが展示されていました。1839年製で「キリンピアノ」というそうです。
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ムジークフェラインから西に行くと、セッセシオンという美術館があります。ここはベートーヴェンの第9の4楽章をモチーフにしたクリムトの壁画が展示されています。残念ながら、展示物を写真に撮ることは禁止されていました。
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さらに西に歩いて5分のところにウィーン美術史美術館があり、ブリューゲルやベラスケスのコレクションやクリムトの壁画が有名ですが、Duplessisという人によるグルックの肖像画もありました。これは有名な肖像画ですよね。
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今度はスゥィーツを求め繁華街を歩きました。国立歌劇場の裏手に位置する、ザッハトルテで有名なホテル・ザッハ。その壁面には下の写真のようにヴィヴァルディを記念するパネルが!ヴィヴァルディは最晩年にウィーンに来てこの地でなくなりました。ホテル・ザッハがあるのはヴィヴァルディが住んでいた家があったところだったそうです。
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美術館巡りを終えたあと薄暗くなりましたが、地下鉄、バスを乗り継ぎ北方面の郊外、ハイリゲンシュタットへ。ベートーヴェンが難聴を苦に自殺を考え遺書を書の遺書が展示されている“ハイリゲンシュタットの遺書の家”に行ってきました。
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正月休み明けのためか観光客は他には誰もいませんが、有名な“ハイリゲンシュタットの遺書”や、ベートヴェンのデスマスク、遺髪、医師の診察料の領収書などが展示されています。ベートヴェンが過ごした空気が感じられ、思わず背筋がピンとなりそうでした。
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ここから歩いて10分のところに、彼の好んだ散歩道で、「田園」の構想をしたと言われる”ベートーヴェンの散歩道”があります。暗くてよくわからなかったのですが、確かに自然に囲まれ、のどかなところのようです。ふと気づくとベートーヴェンの胸像が見守ってくれていました。

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# by amati701 | 2016-01-31 08:24 | 音楽
1月10日、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団演奏会。ウィーン楽友協会黄金のホール。指揮:アンドリス・ネルソンス。この日のメインは先に書きましたベートーヴェンの英雄。しかしもう一つの目玉が、オッテンザマー父子子3人による Iván Erödのクラリネットのための三重協奏曲、世界初演です。
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父エルンストは、ウィーンフィルで30年以上もの間首席をになっている名手。私が昨夏、ザルツブルグとプロムスでウィーンフィルを聴いた時も、トップはこの人だったと思います。兄ダニエルは2009年からウィーンフィルの首席奏者として活躍しています。そして弟アンドレアスは2011年によりベルリンフィルの首席奏者についています。昨年冬のベルリンフィルのロンドン公演時には、シベリウスの交響曲第1番冒頭の素晴らしいソロで聴衆を引きつけていました。アンドレアスはアンサンブル・ウィーン=ベルリンのメンバーでもあり、イケメン若手クラリネット奏者としてマークされている方も多いかと思います。

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この親子、クラリノッツという3人のアンサンブルグループとしても活躍しています。過去に来日公演を聞かれた方もいらっしゃるでしょう。本日のトリプル・コンチェルトは、このクラリノッツのために作曲された曲だそう、この日が世界初演、作曲者のErödさんも曲が終わると舞台に登場していました。音楽語法としては保守的なもので、20世紀後半以降の現代奏法をほとんど使われていませんでしたが、クラリネットの技巧と魅力を十分に引き出し活用するものでした。2楽章の静かで深遠な世界は、モーツァルトを意識したのではと思わせるようでした。
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そして、このオッテンザマー父子3人、当たり前ですがめちゃ上手いです。父エルンストは、滋味豊かな音色でアンサンブルを支えます。しかしウィーンフィルの名物プレーヤーもこの日ばかりは息子達に押され気味、主役の座を譲っていました。兄ダニエルのクラリネットは貴公子のように美しく気高く毅然としています。テクニックも抜群。弟アンドレアスは3人の中にいると少々やんちゃ振りを発揮。自由自在な表現でスケールの大きさが伺えます。
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何より面白かったのは、超ハイレベルの音楽を通した父子の会話。父親はハラハラしながら息子たちの成長に目を細め、兄はここぞとばかり長兄の貫禄を存分に発揮、弟はこの日ばかりは末っ子らしい奔放ぶり。皆それぞれの見せ場が終わったときに「どうだい、ちゃんと出来ただろう?!」と言わんばかりに他のふたりに合図を送るそのドヤ顔ぶりは、とても微笑ましいものでした。

アンコールは3人でコパカバーナ。こういう曲は弟アンドレアスの乗りのよさが目立っていましたが、父も一生懸命ポップスのリズムに乗っていました。

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# by amati701 | 2016-01-24 06:55 | オペラ

1月10日、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団演奏会。指揮:アンドリス・ネルソンス。楽友協会・黄金のホール
1) ハイドン:交響曲第102番
2) Iván Eröd:クラリネットのための三重協奏曲(世界初演)
3) ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」

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ムジークフェライン黄金のホールは、私にとってはおそらく一生のうちにあるかないかの経験。年末にWebサイトでたまたま空席を見つけ、またとない好機に急遽ウィーン遠征を企画しました。やはりロンドンは便利です。アンドリス・ネルソンス指揮でメインはベートーベンの英雄。チケットを購入したサイトからは席を選べなかったのですが、来てみると前から5番目の真ん中のあたり、かぶりつきの席でした。ニューイヤーコンサートだったら、TV中継に映っているであろう席ですね。
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とにかく、このホールでウィーンフィルの音を聞くことが憧れでした。実際に聴くそのサウンドは、超高級絨毯のように美しく、きめ細やか、そしてフカフカに暖かい。ところどころ丁度糸のほつれが見られるようにアインザッツのわずかな乱れが見られますが、そんなことは些細なこと。CDで聴く時以上に全く気になりません。コンサートマスターは、ライナー・ホーネック。
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この写真に見えるメガネをかけているチェロのトップの人、英雄の第2楽章の冒頭のソロの動き見事でした。

指揮のネルソンスはまだ37歳。ロンドンフィルではしばしば振っているようですが、まだ見たことも聴いてこともありませんでした。写真では颯爽としているようでしたがいざ見てみるとかなりの割腹の良さ、とても30代には見えません。指揮台に出て来るだけで汗ビッショリ。実際の指揮は、大きな身振りでエネルギッシュです。指揮棒を左右の手に頻繁に持ち替え、両手であちこちのパートに指示を出します。ポイントのアクセント時には足踏みまで動員します。前方の席だったので、メロディーを歌う声や息継ぎそして唸り声までも発しているのが聞こえました。ウィーンフィルに気後れすることなく、ぐいぐい音楽を引っ張っていきます。
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それゆえ「英雄」の演奏自体、確かに奇をてらわずオーソドックスなものでしたが、きわめてエネルギッシュで推進力のある演奏でした。スケールが大きいだけでなく弱音の美しさも格別です。もちろんウィーンフィルのサウンドの美しさがあってからこそではあります。ベートーベンのオーケストレーションの面白さがウィーンフィルで聴くと際立っていました。

アンドリス・ネルソンス、若年ながら、天下のウィーンフィルをこれだけリードしていけるのはたいしたものですね。今後、世界の楽壇の中心となっていくであろう指揮者だと思います。ただし、やはり体格良すぎ。もう少し節制して健康に気をつけて欲しいものです(?!)。

クラリネットのためのトリプルコンチェルトももうひとつの目玉ですが、こちらは後日。。。。。


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